今日の話は実際に、全て私が見聞きした話です。

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オクラ農家の佐伯さんの話
夏はオクラ、冬は春菊と菜花を栽培している佐伯さん(仮名)の話だ。
一昨年の八月、週に3~4度はオクラを出荷しに来ていたのだが、徐々に出荷数が減っていた時期があった。
担当だったので気になり、病気かなにか発生しているのか聞いてみた。
しかし、はっきりとした答えはなく、口ごもりその日は帰ってしまった。
よくあるケースで、他の出荷先が値段を上げてきて、他社に流れているパターンかと判断し、思い切って発注の値段をグンと上げてみた。
減り続ける出荷量
しかし、翌週も目に見えてズルズルと出荷量は落ち続けた。
顔を合わせても素っ気ない様子で、さっさと荷物を下ろすと帰ってしまう。
ついには予定していた半分ほどにまで出荷量は落ち込んだ。
もう我慢できんと捕まえて事情を問い詰めると、
実は盗難にあっている、と。
しかも生易しい量ではなく、全体の収穫量の半分程は盗やられているそうだ。
ビックリしたと同時に、なにか対策は取っていないのかと聞くと
「最初は見つけて捕まえてやろうと思ったんやけど、よく考えてみたらこんなに盗っていくの業者やろ。しかも短時間で。
何人もで来て、真っ暗な畑で収穫してると思ったら、怖くてよういかんかってん。」
確かに、と納得した。
人気のない田舎の畑にトラックで乗り付け、数人で一斉に盗んでいく。
そんな業者がいると噂では聞いたことがあったが、まさか身近に起こるなんて。
真夏だったが背筋がゾっとした。
家庭菜園を楽しむ加藤のおばちゃんの話
次は大規模な家庭菜園がある加藤さん(仮名)の話だ。
一枚の畑が広く、1反(300㎡)はあり、さすがに広すぎるのか一部を知り合いに貸している。
集荷に行くと色々と野菜をくれたり、缶コーヒーをくれるような土いじりが好きな気さくなおばちゃんだ。
その加藤のおばちゃんからエンドウ豆が盗られたと聞いた。
畑は川沿いにあり堤防から一段下がっている。
堤防の上は車が走れるほどのアスファルトの道路だが、一段下がった畑は夜は電燈も無く、月が無ければ真っ暗になるようなところだ。
その後もたびたび玉ねぎが盗られたとか、チンゲン菜が盗られたなど多種多様な野菜が盗られ続けた。
一向に収まらない野菜の盗難被害
半年ほどしても盗難被害が収まらないので、とうとう警察に相談しに行った。
しかし家庭菜園の盗難事件などでは警察も腰が重く、取り合ってくれなかった。
結局は自費で菜園の出入り口に防犯カメラを設置し、早朝の時間帯を息子にパトロールしに行ってもらうことにした。
次の日、明るくなる6時ころに息子が早速パトロールに向かった。
加藤さんは朝食の準備をして、帰ってきた息子に様子を聞たずねた。
しかし特に変わった様子もなく、畑の一画を貸している知人が朝早くから作業をしているだけだった。
その日の昼過ぎに加藤さんが畑に作業に行くと、作物が盗まれている様子は無かった。
それから毎朝、息子はパトロールにいき、盗難被害は収まった。
半月もすると息子も次第に面倒になり、寒かったのも重なりパトロールを休んだ。
するとその日、加藤さんが畑に行くとゴッソリと作物を盗られていたのだ。
加藤さんは怖くなった。パトロールをやめた途端に盗まれているのだ。
まるで誰かに見られているかのように。
自宅に帰り防犯カメラの録画を確認して見ても、変わった様子もなく早朝から畑の一角を貸している知人が作業に来て、9時ころに帰っただけだった。
関係者しか出てこない防犯カメラの映像
こうなってしまうと、どうしても一画を貸している知人Aを疑ってしまう。
その後も防犯カメラに不審な人物が映ることがなく、知人Aしか映っていないが盗難被害が続いたのだ。
加藤さんは疑うようで悪いのだが…と切り出し、知人Aに盗難の被害状況を説明し心当たりは無いか尋ねた。
特に狼狽える様子もなく、ここらへんも物騒になったなぁ、などと話してその日は終わった。
その後、盗難はパタッと無くなり、
知人Aからは畑の一画を返してもらったそうだ。